既得権益は悪なのか

最近何かと既得権益を叩く風潮があります。既得権益により、不当に利益を得ている人がいることは事実でしょう。だからといって、既得権益全てを批判するのは話が違います。
今回は、既得権益について考察します。

既得権益は必要だから存在する

既得権益とは、ルールや規定によって守られた権益の事です。この様に書くと、ルールや規定によって守られているのはズルいと考えるかもしれません。しかし、理由があってルールや規定で守られているのです。
既得権益だと叩かれているものの多くは、公共性の高い事業です。公共性が高い事業というのは、国民の安全や便利を支えたり、自然保護を行ったりと、市場に任せてはうまくいかないものがほとんどです。具体的には、インフラ事業はそれにあたります。社会インフラは利益を度外視しなくてはならない側面が存在するため、市場に任せてはうまくいきません。詳しくはインフラを参照ください。
この様に、既得権益で守られているからこそ、社会がうまく回っている事業が存在するのです。しかし、日本人のほとんどが、既得権益を敵視しているのが現状です。

既得権益を壊せば新たな既得権益が生まれる

既得権益と叩き、郵政を民営にしたのは最たる事例です。郵政公社必要だから存在したのに、既得権益だと攻撃し、民営化を行いました。その結果、郵政公社という既得権益はなくなり、そこにはアフラックという新たな既得権益が入り込みました。郵政公社は公共性の高い特殊法人ですが、アフラックはあくまでも民間法人です。民間は利益を出さなくてはなりません。そうなれば、質は下がり、料金は上がります。
他には、大阪市は公務員が多すぎると、公務員に対するルサンチマンが煽られました。「公務員天国」などと揶揄して、大きく公務員を叩いたのです。公務員は公共性の高い事業に従事しています。そのため、給料も国から保証されています。そして、公務員の態度などが当時問題になったりもしていました。なので、既得権益として叩くにはもってこいだったのです。そこで、公務員の数を減らし、行政の職員を派遣社員にました。この場合は、公務員という既得権益が無くなった代わりに、派遣会社という新たな既得権益が生まれたのです。
この様に既得権益を失くしても、そこに新たな既得権益が生まれるだけなのです。

レントシーカー

既得権益と特定の団体を指して叩いているのは、政治家です。しかし、その裏にはレントシーカーやロビイストと呼ばれる人がいます。レントシーカーとはレントシーキングを行う人です。民間が政府や官僚に、法律の変更や政策に関して自らが利益が出るように働きかけることをレントシーキングと言います。つまり、レントシーカーが、既得権益に対するルサンチマンを煽っているのです。そのため、自らも既得権益を叩いてしまうと、レントシーカーに利する行動をしてしまっているのです。

最近、既得権益として大きく叩かれているのは農協です。農業も非常に公共性の高い事業です。農協の既得権益に対しては海外の穀物メジャーが奪おうとしています。また、電力会社も叩かれ、発送電分離法などの法律もできました。この法律に外資の規制はありません。今の日本では、既得権益と叩いてはその権益を外資に売り渡す政策が行われているのです。既得権益と叩く人は、売国に手を貸しているのと同じです。

結論

以上が既得権益についての正しい理解です。既得権益が間違えた方向に進んでいるものもあるのは事実でしょう。しかし、ほとんどは必要だから存在しているのです。既得権益について叩いたところで自分は幸せにはなりません。そして、得をするのはレントシーカーです。
何も理解しないで既得権益を叩くと、結局自分に返ってくるのです。「人を呪わば穴二つ」とはまさにこのことでしょう。

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