日本政府は、プライマリーバランスを黒字にしようとしています。
このサイトでは、プライマリーバランスは赤字でなくてはならないと主張してきました。そして、過去にプライマリーバランスを黒字にした国が財政破綻したという事例があります。
今回は、その事例について考察します。
アルゼンチン
一つ目の事例はアルゼンチンです。
アルゼンチンは90年代初頭に経済危機に陥りました。そこで、IMFに救済を依頼しました。IMFは「2003年までにプライマリーバランスを黒字すること」を条件に融資しました。これを受けアルゼンチンでは歳出を削減し、1998年以降の経済はマイナス成長をしましたが、2001年の1月にプライマリーバランス黒字を達成しました。その結果、その年の暮れにアルゼンチンは財政破綻しました。
ギリシャ
二つ目の事例はギリシャです。
2008年のリーマンショックの打撃を受け、ギリシャはIMFに救済を依頼しました。アルゼンチンの時と同様に、ギリシャもプライマリーバランスの黒字を押し付けられました。ギリシャは増税と歳出削減を行い、2013年には目標を達成しました。その結果、ギリシャのGDPの4分の1は吹き飛び、失業率は26%(若年層の失業率は60%)となりました。そして、ギリシャは2015年には財政破綻に陥りました。
破綻理由
プライマリーバランスが黒字化すると、財政破綻をするのです。
ギリシャを引き合いに出し、日本政府の財政赤字は多すぎてデフォルトすると言う意見がありますが、真実は逆で、破綻前のギリシャのプライマリーバランスは黒字だったのです。
では、なぜ政府が黒字になると財政破綻するのでしょう。
経済全体は国内民間部門、国内政府部門、海外部門から成り立っています。そして、この3つの合計は必ず0となります。なぜなら、誰かの支出は誰かの所得として受け取られ、支出の合計は所得の合計となるからです。さらに詳しい説明を見たい方はGDPとは、お金は使っても無くならないをご参照ください。
そのため、政府が黒字になるということは国内国民部門もしくは海外部門が赤字でなくてはなりません。海外部門の赤字とは経常収支の黒字です。ですが、経済がボロボロでは経常収支の黒字は期待できません。そのため、国内民間部門が赤字となり、国民は貧しくなり経済はより悪化します。その結果、財政破綻するのです。
日本の対策
今の日本は政府を黒字にしようとしています。そのためには、国民が赤字を背負わなくてはなりません。ですが、そう言えば国民は反対します。そこで、日本には内需はないとして、経常収支を大きくすると言っています。ですが、日本は内需がGDPの80%を占める内需国です。インバウンドなどのアホな政策をやっても日本の経済は上向くはずもありません。政府が、しっかりと赤字を増やせば内需は増えます。
日本国民はしっかりとした知識を持ち、上辺だけの言葉に惑わされることのないようにしましょう。