収穫逓減と収穫逓増

経済用語に収穫逓減と収穫逓増というものがあります。
これは、投入した生産要素をk倍にしたとき、それにともなう生産量の増加率がいくらになるのかを表した法則です。
生産要素がk倍の時、生産量がk倍よりも小さければ収穫逓減となり、生産量がk倍よりも大きければ収穫逓増となります。
今回は、この二つの法則から、現在の経済について考察します。

時代は収穫逓増

産業革命以前では、農業分野において、人口は増えるけれど、それに伴って収穫量が増えません。経済学者のマルサスはこの様に考え、この考え方を「マルサスの罠」と言います。これは、収穫逓減となります。産業革命以前においては、この考えは正しかったのです。ですが、イノベーションにより、産業革命が起き、生産量は爆発的に伸び、収穫逓増の状態となりました。
現在の経済でも、AIの発達による生産性の向上が度々話題になります。問題として、人々の雇用が奪われるのではないかと言われます。

雇用と格差

産業革命時には機械化によって多くの職が無くなりました。その代わりに工場での雇用が生まれたのです。今でも、数年前にはあったけれど、今はない職業があります。例えば、電話交換手やエレベーターガールなどがそれに当たります。逆に、数年前になかったけれど今はある職業があります。プログラマーやyoutuberなどがそうです。

AIの発達で雇用が奪われることはないでしょう。むしろ、問題は格差の拡大です。産業革命から第二次世界大戦まで、貧富の格差がどんどん開いていきました。そして、現在も貧富の格差は非常に大きくなっています。なので、AIの発達で心配しなくてはいけないのは、雇用の問題ではなく格差の問題です。
AIによって雇用が失われてしまうというマインドでは、富の持つ者の思うつぼです。むしろ、働かないで、稼ぎすぎた分少しよこせ、くらいの考え方の方が、問題は解決するでしょう。

日本は収穫逓減

日本経済ではどうでしょう?
日本では、現在人手不足を理由に移民を入れています。イノベーションは、人手不足の中で起きます。日本は、イノベーションの機会を、自ら手放しているのです。イノベーションが起きなくては、いずれ生産に限界が起き、収穫逓減となります。つまり、日本は自ら亡国へと向かっているのです。
また、人手不足を人で解決するという考えは、労働集約的です。資本主義においては、資本集約的でなくてはなりません。現在の日本は資本主義すらも否定しているのです。

結論

今回の記事で、資本主義は収穫逓増であることと、それに伴う問題を挙げました。
今回の考察で、日本人の考え方として大きく間違えているのは、「人手不足は人で解決する」と「雇用と格差の問題をはき違えている」ことです。前者において、本質を理解しているならば、人手不足を問題にはしません。後者においては、雇用問題を議論する前に、税制度や社会保障について見なおすべきなのです。もし、雇用問題を解決したいのなら、政府主導で雇用を作り出す必要があります。
今後、日本の経済を良くしたいのであるならば、今ある問題の本質を見極め、解決策を議論していかなくてはなりません。

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