戦略物資

戦略物資とは安全保障上、戦争遂行において不可欠で重要な物資です。
こう聞くと石油を真っ先に想像するでしょう。
しかし、戦略物資において最も重要なことは貿易している国同士の力関係を決定づけるモノである必要があります。
この条件をもとに戦略物資について考えていきましょう。

石油は戦略物資なのか

まず、石油について考えてみます。
第一次世界大戦時、フランスのクレマンソーがアメリカのウィルソンに「石油の一滴は血の一滴に値する」と電報を送りました。
日本が大東亜戦争を起こすきっかけは、日本に対して石油の輸出を禁止して、日本では石油が不足したためです。
そして、中東戦争が勃発すると先進国は中東から高い値段で石油を輸入しなければなりませんでした。
この時代においては石油は戦略物資になりえていました。
しかし、その後先進国はいろいろな地域の油田を開発したり、石油以外のエネルギーを開発したため、一定の地域の石油に依存しなくなり、エネルギーも石油以外の選択肢が生まれました。
このため、石油に対する需要は供給に対して小さくなりました。
この様な状態では、石油は戦略物資とはなりえません。
つまり、売り手市場のモノを戦略物資というのです。

日本に対する戦略物資

日本に対する、戦略物資は何なのでしょうか。
石油は、今の話から違います。さらに付け加えるなら、石油の輸出国は石油を輸出することで経済を成り立たせています。そのため、日本には石油を輸入してもらわなくてはいけないのです。なので、貿易の問題で石油がどうのこうの言っている人は的外れです。
では、日本に対する戦略物資は何でしょう。
それは、食料でしょう。日本の食料自給率(カロリーベース)は38%で、穀物自給率は28%と相当低い水準です。よく生産額ベースで見ればそこそこ高いという意見がありますが、これは誤りです。日本の農業は土地が狭く効率的に農業を行うことが困難です。なので作物の生産額は上がります。つまり、日本の農作物は金額が高いため生産額ベースでは高い値を出すだけです。また、品目別で食料自給率(重量ベース)で見たとき、米と野菜は高い水準を示していますが、穀物はもっぱら低い値を出しています。さらに、カロリーベースの場合、家畜に与えるエサも自給できているかで判断します。肉が国産でも、エサが外国産であるならば、自給率は低くなるのです。なので、カロリーベースの方が正確なのです。確かに、カロリーベースに問題があるのは事実かもしれませんが、それを根拠に日本の食料自給に問題がないとするのはいささか乱暴ではないでしょうか。
食料は国内の余剰分を輸出に回しています。これだと石油と同じではないかと思われるでしょう。しかし、作物の生産は天候などの影響を受けやすいため安定しません。そのため、不作になれば国内に優先的に回して、日本に対して高い値段で売ることが出来るのです。
なので、日本の農業は課題が多いでしょうが、ここで外圧を使うと取り返しがつかないことになってしまいます。

日本の戦略物資

では日本には戦略物資はないのでしょうか。
私は水が戦略物資になるのではないかと思います。
今後、水は不足してきます。
日本の水は世界でも多く綺麗だということを、日本人自身が自覚しないと今後取り返しがつかないことになってしまいます。

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