EUは離脱できない

ブレグジットを読んでいただければ、イギリスはブレグジットをさっさとすればいいのではないかと思われるはずです。しかし、ことはそう簡単ではありません。
なぜなら、EU加盟には強烈なロックイン効果があるからです。
ロックインについてはロックインを読んでください。

今、イギリスがブレグジットできないでいるのは、国内で反対派が多いからではありません。確かに、国民投票で票を真っ二つにしたため、反対派が多いことは事実でしょう。
しかし、今揉めている最大の理由は離脱のためのスイッチングコストが高すぎることです。
では、離脱にかかるスイッチングコストとは何のことでしょう。

まず、離脱の合意をEU側と行うことです。
この合意内容には、イギリスとアイルランドの国境の問題が難航しています。
この問題は、コンセンサスを取るのに非常に苦労します。
しかも、時間が決められています。今、イギリスは期間を延ばしていますがそれもいつかを終わります。

次は合意なしの離脱です。
離脱をしたら多くのメリットがあるのだから、合意なしの離脱でもいいのではないかと考えるでしょう。
しかし、合意なしの離脱のための準備は相当苦労します。
合意なしの離脱でイギリス政府は「EUプログラムと基金」「国境」「市民」「移民」「農業」「漁業」「食料」「保険」「運輸」「サービス」「エネルギーと環境」「競争」「税とデータ」「司法」 について準備しなくてはなりません。今、イギリス政府が準備できているのはEUプログラムと基金だけです。
つまり、合意なしの離脱を簡単に行えないのです。

もし、合意がうまくいったとしてもその後が大変です。
EUとの合意を批准して国内法を作ります。
そうなれば、膨大な数の関連法を敷くことになります。
その後、移行期間の間にEUとの新たな通商協定を結びなおかつそれを批准しなくてはなりません。
これにはあまりにも時間がなさすぎます。

今、ブレグジットしてしまうとイギリスは法的な空白状態になってしまいます。
そうなれば、経済や政治が混乱して国内は大きなダメージを受けます。
つまり、イギリスはブレグジットしたくてもできないのです。

共通の通貨であるユーロ使っていないイギリスですらこの様な大変な作業があるので、ユーロを使っている国はもっと大変でしょう。
今、日本では自由貿易をすることを推進しています。
しかし、一度行ってしまったものは、元に戻すのはかなり困難です。
条約は憲法の上に立つのでダメならやめてしまえばいいが通じないのです。
この様な国家間の協定に関して日本はもっと慎重になるべきです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする