格差拡大や景気回復の解決策として、内部留保課税を行おうという意見が出ています。現状、日本の大企業の内部留保は問題ですが、解決策として内部留保課税は間違えています。今回は、内部留保課税について考察します。
資本主義経済での資金調達
まず、内部留保とは企業の利益と考えて頂ければ良いでしょう。この内部留保が大きくなると何が問題なのかと言えば、本来、お金は使われて初めて意味を持ちます。このお金が特定の場所に溜まっているということは、その分誰かがお金を手に入れることが出来ないということです。個人の黒字なら、その額は大きなものではないのでしょうが、企業の場合は桁が違います。そのため、内部留保が大きいということは、正常に経済が回っていないということです。つまり、内部留保はない方が経済というマクロの視点からは良いということになります。
設備投資や企業買収などのお金がかかることをするために内部留保は必要だという意見がありますが、お話になりません。資本主義ではスペンディングファースト、つまり支出が先なのです。なので、何か支出をする場合借金をするのです。何か行動をするときに貯めたお金で行動するのは、資本主義の本質ではありません。
企業が内部留保を抱える理由
ここ最近で企業は、内部留保を大きく持つようになりました。その理由は、日本がデフレだからです。デフレ下では、企業が設備などの投資を行うよりも、お金をためておいた方が得なので、企業は内部留保を多く持とうとします。次に、法人税が低いからです。日本の法人税は高いという人がいるのですが、それに関しては否定します。詳しくは法人税をご覧ください。法人税が高ければ、企業は税金対策として社員の給料を上げたり、投資を行ったりします。しかし、日本は法人税が低いため、企業は利益を内部留保に回してしまいます。
内部留保を吐き出させるために
さて、ここまでの解説で内部留保が日本経済にとって良くないということは分かって頂けたと思います。そこで、内部留保を無理やり吐き出させるために課税をしようというわけです。これは、非常に問題のあるやり方です。そもそも、内部留保は企業の純資産です。これに課税するということは私有財産権の侵害です。もし内部留保課税が認められれば、個人の預金に対しても課税が認められることになります。なので、内部留保を吐き出させるためにはほかの方法を取らなくてはならないのです。一番簡単なところでは、法人税の累進性の導入でしょう。日本の法人税は累進制ではありません。なので、経営が厳しい企業からはあまり取らないで、内部留保を抱えるような儲かっている企業からは多くとるといった形を取れば、儲かっている企業は投資などを行うでしょう。
この様に、内部留保課税以外にも、内部留保を吐き出させることは出来るのです。
結論
以上が内部留保課税に関する問題です。
実際、日本の経済が落ち込んでいる問題として、内部留保自体は表面化した問題であり、根本の原因はデフレです。内部留保ばかり叩いても問題を根本的に解決することはありません。
内部留保は問題です。ですが、もっと本質に目を向けなくては、日本の景気回復を行うことは出来ません。