ウォーレン・モズラーの名刺

税金の目的に、通貨の価値を固定させるためだと説明してきました。これについては税金で説明しています。しかし、これは感覚的に非常に理解し難いものです。そこで、経済学者のステファニー・ケルトン教授が「ウォーレン・モズラーの名刺」という非常に分かり易い説明をしていました。今回はこの話を、私なり掘り下げ説明させて頂きます。

徴税で名刺を通貨に

ウォーレン・モズラーという大富豪が居ます。彼は屋敷に子供たちと住んでいます。彼の子供たちは、全く家事を行いません。そこで、モズラー氏は「家事をすれば名刺をあげる」と子供たちに言いました。しかし、子供たちは「パパの名刺はいらないから、家事はしない」と言いました。それもそのはず、子供からしたらモズラー氏の名刺などただの紙切れでしかないのです。そこで、モズラー氏は「月末までに、20枚名刺を提出できなければ、屋敷から出て行ってもらう」と言いました。すると子供たちは家事を行うようになりました。この時から、名刺はただの紙切れではなく、屋敷に住むために必要なものとなり、子供たちは名刺を欲しがるようになりました。

ここまでの話で分かったと思いますが、月末の名刺の提出が徴税に当たります。名刺の提出が、この話では名刺に価値を持たせています。つまり、徴税を行うことで政府が発行する通貨に価値を持たせることが出来るのです。何度も言いますが、税金は財源の確保ではありません。
この話に、私なりのアレンジを加えます。

徴税と物価のコントロール

とある月、Aという子供は、名刺を集めきれませんでした。そこで、AはBという子供に名刺を貸してくれるようにお願いに行きました。BはAに「名刺を貸してあげる代わりにおもちゃを一つ貸してくれ」と言いました。Aは名刺がなくては屋敷から追い出されるのでおもちゃを貸しました。翌月AはBに名刺を返して、おもちゃも返してもらいました。ここで、Bは「名刺を貸さないであげてしまえば、おもちゃを貰うことが出来るのではないか」と考えました。そこでBはとある月に手伝いをたくさんして名刺を貯めこみました。そしてBは名刺を使い他の子どもからおもちゃを買いました。そして、とある月、Bは手伝いをしなくても貯めた名詞だけで屋敷に住むことが出来ました。その様子を見ていた他の子どもも名刺を貯めこむようになり、ついに誰も手伝いをしない月がありました。そこでモズラー氏は、今月は40枚提出してもらうとして、子供たちから名刺を回収しました。

ここまでの話で、徴税があるから名刺でモノを買うことが出来るということが分かります。また、後半で名刺の量が多くなり名刺の価値が小さくなりました。そこで、子供たちから名刺を多く回収して名刺の価値を調整しました。これは、徴税におけるビルトインスタビライザーに当たります。インフレ時には税金を高くして物価の調整を行うのです。デフレの様に名刺が足りないときは、家事を作り出し名刺の数を増やすのです。つまり、財政出動を行うのです。

モズラー氏は破綻しない

モズラー氏は、前回の反省から、名刺の数を増やし過ぎないようにしました。それでもBは名刺を貯めました。すると、とある月末間近にCは提出するだけの名刺の量が無くなりました。モズラー氏もCが家事を一生懸命やっていたのは知っていました。しかし、ここで名刺が無くても屋敷に住めるとなれば、この制度の地盤が崩れます。また、安易に名刺を渡すとまた前回の様な事となってしまいます。そこで、モズラー氏はBから名刺を10枚借りるとメモを残しました。そして、その10枚を配りCは何とか月末に名刺を提出することが出来ました。その後Bには名刺を10枚返しました。そうすることで、子供たちの名刺の量を増やすことなく、回すことが出来ました。

今回の話で重要なのは、Bがモズラー氏にメモ一つで名刺を貸したことです。子供同士の貸し借りならば、おもちゃが必要でした。しかし、モズラー氏は名刺を印刷することが出来るため、Bは簡単に名刺を貸したのです。 また、名刺ではなくメモを渡すことで、名刺の量をコントロールしました。このメモは実際の世界では、国債に当たります。 つまり、通貨発行権を有している政府は借金によりデフォルトはしないのです。

結論

以上が「ウォーレンモズラーの名刺」です。
ところどころ私のアレンジを加えましたが、これが徴税に関する分かり易い例え話だと思います。今回の話は、商品貨幣論であるため、現実とは異なるところもあるのですが、大まかな内容はこの話の通りです。
この話で重要なのは、徴税で通貨価値を固定するです。もし、まだ理解が出来ていないのなら、この話をもう一度読み直してください。

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