「経営において最も重要なことは株主の利益の最大化である」と考えている経営者は多いでしょう。もちろん、株主の利益を考えることは重要です。ですが、この考えの危険なところはマクロの世界では間違えているということです。いわゆる合成の誤謬です。
今回は、この考えがマクロでは間違えている理由を説明します。
利益追求は本当に正しいのか
まず、大前提として企業が良い商品や良いサービスを提供することで利益を拡大しているのならとても良いことです。問題なのは人件費の削減によるコストカットを行った場合です。人件費を削減することで企業の利益が増えた場合、日本経済の需要が減少します。そのため、企業は売り上げを伸ばせません。そうなれば、企業は利益を増やすため人件費をより安くします。その結果日本では諸外国と比べて圧倒的に派遣社員の数が多くなりました。
また、短期的な利益を追求した場合、長期的な戦略を立てることが困難となります。そうなれば、イノベーションは起きず新しい技術も生まれません。こんな状況が社会にとっても企業にとっていも良いはずがありません。
株主の利益だけを考えると最終的には株主も損することとなってしまうのです。
日本の法人税
次に、税制の問題です。
日本では法人税は下がり続けています。これは、国際競争力を上げるために行っていると考えている人が多くいますが、完全に間違いです。法人税を下げても国際競争力は上がりません。これについては法人税で説明しています。国際競争力も上がらないのになぜ法人税を下げているのでしょう?それは株主の配当金を増やすためです。現在の投資家の多くは外国人です。なので、日本の法人税が下がったことで外国人が得をします。法人税を増やせば日本の所得が海外に持っていかれ、日本経済のデフレは加速することとなります。ちなみに、10月の消費税増税の際に法人税はキッチリと減税されています。
フォーディズム
さて、昔の経営者はこれをちゃんと理解していました。
フォード・モーターの創業者のヘンリー・フォードは自らの企業の商品が売れ様にと従業員の給料を上げました。結果、給料が上がった社員はフォードの車を買い売り上げは上がりました。この思想をフォーディズムといいます。
結論
以上が株主の利益だけを考えてはいけない理由です。
株主の利益を考えることが悪いことだとは言いません。ですが、目先の利益だけを追ってしまえば、長期的に見たら損をすることはよくあります。その結果取り返しのつかないこととなってしまうこともあります。現在の日本はまさにその様な状況です。早く政府が財政拡大し、科学技術予算を増やし長期的な研究開発を行える状況にしなくては、日本の技術は没落の一途でしょう。